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笑いの医学的研究の道を切り開いたノーマン・カズンズ

ここ最近、世界中で笑いの医学的研究が盛んになっています。日本においても今年2017年に入って、笑いの文化が最も発達している大阪にて、多くのお笑い芸人を抱える会社吉本興業や松竹芸能などが大阪府と連携して、「お笑いはガンに効くのか?」という実証研究を始めたことを発表し、話題になりました。

お笑いはガンに効くのか? 大阪府と吉本興業らが実証研究へ

こういった笑いの医学的研究の歴史は約40年くらい前からで、まだ歴史は短いものの、着実に発展していると言えるかと思います。

笑いの医学的研究が本格的に始まるきっかけとなったのは、1979年にアメリカ人の当時ジャーナリストであったノーマン・カズンズ(Norman Cousins)が出版した『笑いと治癒力』(邦題-*1)という本でした。ジャーナリストとして多忙な日々を送っていたカズンズ氏は、1964年50歳のときに体調を崩し、当時の医療ではほとんど治る見込のない難病、強直性脊椎炎(膠原病の一種)と宣告されます。

強直性脊椎炎
“非定型的で両側性の腰部、背部、股関節、膝、肩関節のこわばり(特に朝に強い)や痛み、臀部痛などがあり、また腰背部、時に股関節や膝関節、肩関節では可動域に制限がみられる。胸郭運動の制限もしばしば認め、深呼吸で胸部痛がある。”

wikipedia

強直性脊椎炎によって立ち上がることもできなくなった状態のなか、カズンズ氏は発病時の状況から強直性脊椎炎の主な原因はストレスであると考えます。ただし、カズンズ氏は薬アレルギーであったため、薬物治療ではなく何か別の手段を考える必要があり、それが笑いを取り入れたポジティブな感情とビタミンCの摂取でした。

NormanCousins2▲ ノーマン・カズンズの映画『Anatomy of an Illness』より(youtubeから引用)

これは難病の強直性脊椎炎を患ったこと、ジャーナリストならではの探究心が強かったこと、そして薬アレルギーであったことが、カズンズ氏を笑いの医学的可能性を追求する道に導いたと言えます。

とは言え、強直性脊椎炎の症状の特徴上、笑うと脊髄と関節の骨全てが痛むため、当時のカズンズ氏にとって毎日笑うことはとても難しいことであったことは間違いありません。

それでも試行錯誤の末、10分腹を抱えて笑うと少なくとも2時間は痛みを感じずに眠れるということを知り、それからは毎日チャップリンの喜劇などで10分間の大笑いをし、ユーモア全集を読んで、ポジティブな感情を持ち続け積極的に笑うようにしたと言います。その結果、痛みが和らぎ、血沈が徐々に低下しはじめ、数ヵ月後には職場に復帰することができました。

この体験をもとに書いた『笑いと治癒力』の一部が、アメリカの最も権威のある医学専門誌『ニューングランド・ジャーナル・メディシン』に異例的に発表されたことで、大きな反響を呼びました。カズンズ氏は1978年以降UCLAの精神免疫学の教授としてのキャリアも築き、笑いの医学的研究が世界中で本格化することになります。

一度は強直性脊椎炎を見事改善させて社会復帰をしたものの、その後1980年に今度は心臓発作を起こし、再び入院することになります。その際にも笑いを積極的に取り入れることで乗り切り、その体験記を『続・笑いと治癒力―生への意欲』というタイトル(邦題-*2)で、1983年にまた本にしています。

結局カズンズ氏は最初の心臓発作から10年後の1990年に、76歳で重度の心臓発作によりこの世を去ることになりますが、50歳からの26年間、笑いの医学的研究の発展に大きな貢献をしたことが評価されていて、現在でも「笑い療法の父」と言われています。

もちろん、医学的な観点で笑いに過度な期待をすることはリスクが大きいですが、笑いのエネルギーは日々の健康管理、または、いま抱えている疾患の緩和対策として積極的に取り入れるべきものであることをカズンズ氏は教えてくれている気がします。

最後に、カズンズ氏のインタビューの様子と、強直性脊椎炎の闘病を題材にしたテレビ映画『Anatomy of an Illness』(1984年)がyoutubeにありますので、ご興味のある方はぜひ見てみて下さい。残念ながらこのテレビ映画は日本では放映されなかったようですね。英語音声のみで日本語の字幕はないのですが、闘病の様子が分かります。


※2017/6/14時点では見れますが、いつまで公開されているかは分かりません

■ 留意
– 当記事に使用した画像・サムネイルは文中で紹介したyoutubeの動画をスクリーンショットしたものです。
-*1:原題は”Anatomy of an Illness as Perceived by the Patient: Reflections on Healing and Regeneration”
-*2:原題は”The Healing Heart: Antidotes to Panic and Helplessness”

■ 参考文献
自律神経系に及ぼす自発的笑いの実験的検討 (石原俊一)
健康における笑いの効果の文献学的考察(三宅優,横山美)
– 笑いが女子大生の免疫機能等に与える影響(田中愛子,市村孝雄,岩本テルヨ/2003)
笑う治療://www.non-verbalcommunication.(菊池啓/2014)
– 笑いと音楽療法~その連携の可能性に向けて~(木村博子/2015)
ノーマン・カズンズ(吉田萌夏)

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